向かい合って座ったりっくんは、
「肉ならここにもあるだろ?
角切りステーキ、ブタとにんにくの芽炒め……
多恵、やったなぁ、プルコギもあるって」
メニューを眺めながらそう言って、屈託なく笑う。
「焼肉食べたかったな」
「あそこでの話は全部聞かれてんだぞ?
『肉』っつったら『焼肉』は念のため避けるのが無難だろ」
自信満々にそう言うりっくんが憎たらしくて、否が応でも歯向かいたくなる。
「りっくんの方程式なんか理解できないよ。
『ファミレス』って言ってくれたら『焼肉』行けたのに……」
「『ファミレスでステーキセット食って元気出せ』って?
ちょっとピンとこねぇわ」
「ああ、そっか」
思わず納得してしまった。
りっくんは正しい、いつだってそうだ。



