背後から私の頭を抱え込んでほんの少し持ち上げ、その下に反対の腕を滑り込ませた。
そうして、後ろからギュウと私を抱き絞める。
まだ怒りは冷めやらぬというのに、りっくんの抱擁は温かくて心地よくて安心感をくれるから参ってしまう。
だから余計に面白くないという悪循環のような良循環。
「俺はさぁ、ただ、多恵が後悔しねぇかなぁと思って。
今は感情的になってっからさ、正常な判断力はないだろ?
まぁ在り来たりだけど、辞めるのなんかいつだってできるし、ちゃんと冷静になってから、自分がどうしたいのか考えた方がいいんじゃねぇか?」
ごもっともだ、間違いない。
りっくんに包まれて良い気持ちだからなのか、私らしくもなく素直にそう思った。
「りっくんは――りっくんも今の仕事辞めようと思ったことある?」
何となく聞いてみる。
背後にいるりっくんの表情は見えないけれど、フッと空気を漏らしてりっくんが笑うのを聞いた。



