弟を上機嫌にさせる際に用いる必殺技、
赤っ恥なんかなく喉をひっくり返し、幼児向け番組のドジな妖精みたいな音色で言った。
「ゆいちゃん、たいへん、聞いて。よーへーくん、ちょっと血迷ったみたいだよ。」
好感度が高いマスコットにぴったりなアフレコには大成功だが、
好きな子を泣きやます呪文には不正解だったようで、
羞恥心を捨てたつもりが、やっぱり田上さんが無反応だと、
空回り気味な自分の残響にむなしくなる。
一体どんな言い回しをしたなら、こっちを見てくれるんだろうか。
血の巡りが悪くなったせいか、脳みそが怠けだしたせいか、
この唇が昔から沈黙を嫌う理由を、つまり親や弟、小中時代のことを、
好きな子なら、田上さんになら聞いてほしいのに、
どうしてそこはペラペラ面白おかしく話せないんだろうという、
非常にどうでもいい青臭いテーマを考えてしまっていた。
嫌わないで、今日からは嫌いにならないでと、
存在感をアピールしたくてたまらなかった昔へリンクするのは何故。
同級生の女子が憧れるモテモテなイケメン男子ってやつは、
恋人、もしくはそれに準ずる存在には、普段は見せない弱さを売りに、
過去の苦しみを突然語り出し、ラストは人生の希望を見出せたんだで締めるらしい。
「――あの、」
クリスマス効果だろうか、どういういきさつか、
俺はイケメン学生の話術を真似てみたい衝動にかられてしまっていた。



