ずっと田上さんにシカトされるのは悲しい。
平成の国に逃げて、彼氏に欲情されたのがキモくて泣かれるのは切ない。
どんな危機的状況になろうが俺の武器はやっぱり、うざったいお喋りで、
どんなに努力しようが、甘い名言で痺れさせるイケメン紳士や、
ワイルドな言動で抱きしめるオレ様にはなれない訳で、
結果、ウケ狙いの滑り倒す無駄話を始めてしまう。
「あはは、田上さん、まあ聞いてよ。俺な、実はあんま免疫ないんだよ女子。だから田上さんの裸見たら確実に鼻血出ると思うんだ。ふ、あはは。
だからなんつーの、鼻血出ないよーにね、イケメンらしく主導権をね、いろいろ克服したいからさ。当分時間を下さいよ奥さん、はは。
……ふ、ダサいだろ俺、だってさっき、てか今?も、余裕で鼻水赤いっぽいし、あはは」
『キショイ』とか『気持ち悪い』とか、罵倒ツッコミを期待したのに、
彼氏の努力が見事に空回りした。
オルゴールと一緒にしゃっくりをあげる癖に、らしくないお姫様はだんまりだ。
けれど、ずっと無反応を貫いていたのに、少し田上さんのホッペが持ち上がった気がしたので、
ひたむきな俺は純愛をたてに、もうひと踏ん張りしようと決めた。
初めからスムーズならば困難ゼロで楽しくないし、成長しないし、
だとしたら、改善点を見つけ出す方が二人の質は向上する。



