世界で一番不細工なお姫様がお召しになられているのは、
漆器が似合う深い赤色をしたワンピースで、
なんと、それは宇宙一脳天気な王子様のお手製らしく、
衣装の裾には、至近距離で気づく程度に控えめな刺繍があしらわれており、
それがクラシカルな印象を与えるポイントなんだとか。
リットルマークを等間隔に並べた周りに小花を散らす感じ、
簡単に言うと賞状の枠にあるデザインみたいな刺繍は、
凄く神経を擦り減らす細々しい作業で、
またペチコートみたく縫い付けた裏地だって、きちんとフリルにした隠れオシャレ技があって、
自分の手で心を目に見える形にできるから、服飾コースは幻想に近いんだ。
人生において叶えるか破れるかの二つしか夢に選択肢がないのだとしたら、
俺は、努力するも現状維持のままで、でも後少しで達成するような感じで、
でも夢は夢のままで、でも精一杯頑張ればと、あいまいな夢に『でも』と毎日を重ねる選択をしたい。
「なるほどねー、はは。お前焦らしテクだな? ガードかたい女って演出かよ。田上さん演技派ー。うんうん、良いことだ。あはは。
軽いオンナはよろしくないもんな、品がない。うん、好きだよ俺、清純な子の肩書をやろう。めでたいな田上さん」
お喋りな人間は社交的なのではなく、単純に相手の機嫌をとりたがるヘタレなんだと思う。
小中での人気者は、家庭で注目されない寂しさを埋めるため、
学校ではユーモラスな自分を演じているんだと思う。
なあ、田上さんの目に俺は毎日どんな表情で映っているんだ?
田上さんの日常に俺はどんな登場人物として設定されているんだ?



