星空刺繍



「田上さん?、」

相変わらず態度悪く返事はしないし、可憐に嗚咽を混ぜやがる。

らしくないじゃないか。


普段は女の子女の子したクラスメートの奴を、『古典的なブリッコかよ』やら『リアルの女子高生か!』やらと、

仲良しグループで批判がてらネタにしてる癖に、

今の田上さんは、ただのか弱い女の子だ。


健気で一途でいじらしい、男子が妄想する理想の彼女像そのもので、

いつもと別人じゃないか。


切ないとか逢いたいとか、親友とか友情とか、愛してるとか本気とか、

勇気とか希望とか、過去とか陰とか、嘘とか命とか、

学生が好みがちな真剣ワードを揶揄する時に、故意に用いる嫌味な調子を取り戻してほしい。



「……。」

空気を変えるアクションを出さないなら、

どんだけ緊張したか、どれだけ今日に期待したか知ってんのかと、きつく問いたくなる。


初めての子とするのが初めての俺だから、やっぱり狡い。


あんまりだ、残酷だ。
だって俺は十七歳、仕方ないだろう?

田上さんって、結構むかつく。

どれだけ大事にしてきたか、どれだけ大切にしようとしたか、

貴重なクリスマスを台なしにしたのはどこのどいつだ?