もう諦めよう。
この際、ハッピーエンドがお決まりの童話の挿絵の湖みたいに澄んだ水色の下着を、
記念として目に焼き付けてやろうかと思ったけど、
格好悪いから、もうきめ細やかな背中を眺めるのもやめて、
無邪気に色を変えるクリスマスツリーを睨むことにした。
赤、緑、黄、ピンク、青、安っぽい色彩は、高度成長期のネオンのようだ。
発展への希望と夢に突っ走り、確かに全体は潤ったけれど、
後に発覚しはじめたあらゆる杜撰な綻びは、何十年経った頃に響く。
なんだか正に今の二人にぴったりだ。
いつまでも頭を両手で囲むようにして身体を被すのが気の毒で、膝立ちになってみた。
まだ彼氏を拒否る前、田上さんはお姉さん座りで俺とキスをしていて、
その流れで仰向けに寝かせていたせいで、
そこから更に上体を捩り顔を伏せるなんて、凄く今無理な姿勢をしているんじゃないだろうか。
恋人を避けた結果のポーズが可哀相になってきたため、俺は一人胡座をかいた。
ベッドの一カ所に集中していた沈みが分散されるのが分かる。
とうとう、本当に離れてあげた。
これで泣き止めば嬉しいんだけれど。
弟のあやし方には自信があるも、乙女の扱いには不安ばかりだ。
子供らしい笑顔をとりあげた意地悪はおしまい。
早く笑えばいいのに。



