星空刺繍


白状しよう、普通にしたい。
死ぬほど我慢するよりクリスマスぐらい、やっぱりしたかった。


それでも、話術に長けた俺が奇跡的に田上さんを宥めることに成功し、

たくさんの愛の言葉で恐怖を取り除き泣き止んだからと

すんなり彼女を押し倒せない。


仮にねだられても、その甘い誘いには乗れない。

それは違うんだ。
そうじゃない。
その好きは要らないんだ。



そう、抱く抱かないの事柄を急ぐ必要はなく、

ちょうど二人の気持ちが同じ速度で重なった時に、想いに溺れてみる方が絶対オシャレだし、

もしも、このまま未遂で数ヶ月後に破局したとしても、

『あたしの元カレって実は誠実で優しかったんだな、感謝してる』とか、

『洋平くんってちゃんとあたしを愛してくれてたんだね、ありがとう』とか、

卒業してもなお、数年後にさえお礼をされる自分を貫ける方がイケメンだろう?


だから俺は邪心に控えめなんだ。
だから俺は理性を操作するんだ。

そう、制服を脱いで時は流れたなら、田上さんにも幾つかの恋をしているはずで、

そんな未来に、元カレを代表し好かれていたいだけなんだ。


お花畑の国で最も特別でありたい。

子供じゃないので束縛はしないけど、不気味な呪縛はきっとかけてしまってるんだろう。