星空刺繍


きっと、地元のショボイ遊園地に行き、くたびれたイルミネーションを前に、

『経費削減しすぎでしょ』『なんで今時LEDじゃねんだよ』と、

学生らしいテンションで騒ぐ方が、二人は遥かに幸せだったんだ。


手を繋いでキスをする。
それだと足りなくて、もっと触れたくなっている今はなんなんだ?



約一年前、俺が田上さんに片思いをしていた頃、

違うクラスだったため、

姿を見れるだけでその日はラッキーで、数分立ち話できるだけで偉大な進歩で、

内容のないメールをしてくれるだけで有り難くて、

あの頃はただ、同じ学校に居てくれるだけで自然に唇が柔らかくなっていた。


好きな子が隣の教室、廊下側のあの席で、授業を受けている。

あの子の左側に自分が机を並べる姿を空想するだけで幸せだった癖に何故?


付き合うと、付き合う前の淡さが薄れてしまうのは悲しい。

特別が当たり前に、平凡が退屈に、

そんな風に大切な日常の価値を安易に下げるのは、あまりに勿体ないじゃないか。



自分の大切な人が、存在してくれている。

神様の優しさか運命による奇跡か、その人の大切な人に自分が存在している。

その意味を日々、忘れず歩んでいきたいと強く願う。





ほら、こんな感じで、たかが恋愛をめちゃくちゃ大袈裟に尊く説けば、大衆ウケは外さない。

近藤洋平、十七歳。
キラキラ純愛に生きてふんわりポエムを書き綴るよりも、純愛はネタにドン引きしたい男だ。


田上さんと付き合う理由?

そんなの顔が可愛いから好きなだけで、皆に人気な子とやりたいだけで、後はどうでもいい。

こんな風に感動恋愛物語と完璧にさよならできて、俺たち二人はようやく永遠なんだ。