星空刺繍


ゼロ、無、だ。
付き合って九ヶ月、キスマークさえつけたことがない俺は、

一体どんだけヘタレなんだろう。


元々、同級生たちみたいに首筋へ赤色を残すのは苦手で、

そもそも服を着て見えない部分に痕付けしてこそ、二人だけのメッセージ性がある気がする。


九ヶ月、高校二年生、それでも肌を知らないままの俺は、

紳士じゃなく、ただ嫌われるのが怖かった意気地無しなだけなんだ。


今まであんまり触らないようにしていたのは、キスの強さを抑えていたのは、

まことに恥ずかしながら、田上さんに耐える自信がなかった訳で、

一方的に襲わないで済むよう接触を調整していただけなんだけど、

そろそろ自分を解放してもいい時期なんじゃないかと考えた結果が十二月二十四日だったんだ。



でも、淡い計画は見事に失敗してしまった。


こんなことになるなら、クリスマスパワーに則り、手際よくキスをしたまま気づかれないよう服を脱がせば良かった。

ちっとも上手くいかなかった。



一ヶ月間妄想しまくった予定では、

幸せを教えてあげるつもりが逆に教わることになるはずだったんだけど、

甘さ控えめどころか、リアルは無糖だった。


田上さんは今、何を考えているんだろう?

俺は今、自分のことで精一杯なんだけど、その幼さをどうか微笑ましく受け入れてほしい。