星空刺繍


ただでさえか細いオルゴールの音色に負ける田上さんの泣き声こそが、

俺を心細くさせるに十分な威力を放つ。


だって、感情を堪えるのは皮肉であまりに卑怯だ。

盛大に涙を流し豪快に嗚咽したい癖に、一人辛抱する彼女の姿は、

したい気持ちのままに押し進めた彼氏なんかより、遥か大人に見えてしまうじゃないか。


クリスマスに盛り上がって馬鹿みたいだ。
クリスマスを理由にしてアホみたいだ。
クリスマスに傷つけるなんて愚図みたいだ。


「……。」

優しい男子を演じられるということは、

逆に鬼畜がどんなものか知っていることを指すんじゃないかな。


そう、どっちにしろこの可愛い彼女は、彼氏のことが世界で一番大好きだと信じるピュア病患者なので、

今から服を脱がせて身勝手ながらに愛を込めて抱こうが、

数日経てば、クリスマスに無理強いされたはずの彼女は、

結局惚れている時点で彼氏に弱いから、すべて許してくれるんだ。


しかも、純愛患者特有の症状が働き、

なんと数年後になると高一のイヴ事件は、微笑ましい青春の思い出とさえ錯覚できるんだ。


だから――