星空刺繍


本当は彼女の上に座った方が楽なのに、

華奢な子には重たいかもしれないと配慮し、渋々四つん這いになるも、

右手は背へ這わせ使用中だから実質片手のみで支えるきつい体制を選んだ彼氏の優しさは、

こんな仕打ちじゃ滑稽だ。


独りよがりほど、マヌケな瞬間はない。



勉強よりバイトがメインの街中キラキラ女子高生を演じてる癖に、

好きな奴に抱かれたいって微塵に夢見ない田上さんっておかしくないか?

普通は触れたいと思うし、触れられたいと思うはずなんだ。



一番近くにいるのに、一秒とも目が合わないならば、

強引にこっちを向かせたくなる。

そして、手首を拘束し抵抗できないようにした上で、

泣き言をキスで塞ぎ、田上さんの気持ちを無視して抱いてやれるんだ。


別に痛くとか乱暴にとか、雑にとか身勝手にとか、苛立ち任せに激しくなんかしない。

そこまで幼くないし、そこまで非道ではないし、そういう部分で俺は田上さんには敵わない。


優しく奪える。簡単だ。
恋愛中の彼女は恋人の魔法にかかりやすいため、

丁寧な口づけを施される内に意識を吸い取られて、

そうしたら彼氏色の操り人形になり、

なんだか知らない間に不安は消え去りハッピーエンドを迎えるという説がある。


してみる努力をする前に一人で勝手に切なくなって、可憐に涙するのは田上さんが無責任だ。

彼氏に対する立派な嫌がらせだ。

学校裁判の法律なら、二人の環境は訴えなくとも俺が勝てている。