好き、嫌い、どうでもいい。
合う、合わない、生理的に無理。
皆、一人一人に三つの色を塗り分けたがるのは何故?
己の愚図な経験で導き出した我が儘な持論が絵筆なのに、それさえ気づきやせずに他人を評価するんだ。
たとえば、誰かに惹かれるのは相手の長所を真似たいからで、
誰かの欠点が目につくのは自分の鏡だからで、
たとえば、家庭に人一倍憧れが強い近藤洋平が、美少女な田上結衣を好きなのは、
ケーキ屋さんのショーケースをベタベタ触る奇天烈な躾を受けた子供に遭遇した際、
古きよき雷親父みたく指導はしないが、
かといって都会的に目をつむることなかれ主義でもなく、
『いーなー、ペタペタ触りたーい。楽しそー。でもお店屋さんが掃除大変だから結衣ちゃん我慢しよーっと』と、
半笑いのノリで、わざと大きな声で注意を促すアレなところが合うからだ。
田上さんが好き。
恥ずかしいし照れ臭いしキャラでもないため、
本人に言えないけど、言うつもりはないけど、
たとえば、修学旅行の大広間での夕飯タイム、
学年生徒を前に愛してると叫べるぐらい好きだ。
そのぐらい九ヶ月恋愛をしてきた彼女なのに、クリスマスに泣いてしまっていて、
なんか俺は悲しくなっていた。



