首の後ろが熱い。
愛に緊張しているのか女の子に興奮しているのか、
展開に期待しているのか欲求に従っているのか、
自分でも自分という生き物の思考能力は謎だ。
頭を殴られたみたいに立ちくらみみたいに、突然状況判断力が鈍り、
田上さんの背にあてがった俺の手は、彼女に沸騰中な体温の割に凍ってしまったらしく、
全く動く気配がなかった。
とろける濃さのキスをしたり支配するよう押し倒したり、色っぽく囁いたり甘く微笑んだり、
イケメン彼氏として色々と頑張る分、
田上さんってば、いちいち照れたり戸惑ったり、緊張したり焦ったりで、
ラブストーリーの魔法にかけられた表情の変化が初々しくて幼くて、
存分にときめいてたんだけど、萌えまくってる自分がバレたくなくて、
馬鹿だウザイだとガキ大将が得意とする単語を並べ、
一生懸命つまらないお喋りで、平然を装い恋人をイジっておいたんだ。
初めての出来事への反応に困ってる癖に、それを隠したがる田上さんの様子が必死すぎて可愛かった。
それに、『きゃあ』と叫んだ時、あの瞬間は正直完璧にツボった。
だって、俺の行いに合わせて動転する素な感じが、
なんかこう、自分だけの物みたいで、自分だけのために存在してるみたいで舞い上がるには十分だった。
主導権を握らなきゃって、しっかりエスコートしなきゃって、
いいや、そういう身体的な発展も大切だけど、
俺は数分前、きちんとこの子の内面も大事にしなきゃって決意できたんだ。
といった具合に恋愛観を熱弁したがる学生は、どうやら無料で詩人になれるらしい。