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長い髪がでたらめにシーツ上を泳ぐのは絶景で、

自分が広げた膝で好きな子を囲うのは朗景で、

俺がプレゼントしたドレスを着崩し白い肩が覗くのは勝景で、

そして、高校生カップルがツリーを飾った部屋で愛を語り出すのは美景のはずだ。


十七歳は、初めてクリスマスイヴを恋人と過ごす特別な時間となっていた。

まだ消さずにいる明かりは彼氏の我が儘で、けれど臆病彼女に合わせて闇を生む装置なら、いつでも手が届く範囲にある。


水につけたままのボールや包丁は流しに、からになったお皿やフォークは机に、

美味しかったケーキの箱や蝋燭はローテーブルに、指輪やピアスに田上さんのカーディガンは床に、

これから愛し合う予定の少年少女はベッドの上に。



時計の針はまだ六時を抜かない。


八時半までは逢瀬を愉しむ猶予があり、

純愛に則り盛り上がれば、お互い親への言い訳も雅をダシにバッチリなため、幸い泊まることも可能だ。

普通に考えて、そういう特別な夜にあっさり離したくない訳だし。


キスをして、じゃれて、シーツに沈めてみる。

こんな展開を想像しなかったと言えば嘘だ。

手を出さなかった理由は、好きだったからで簡単に好青年ぶれるからだ。



「、……――」

聞き逃す声量、それは大好きなお姫様発信で、自称王子様を痺れさせるには抜群だった。