自分の毛先がホッペに当たってくすぐったいし、背中の真ん中ら辺の下にある違和感が気になる。


天井は見えない。遂に視界は恋に封鎖された。

凄い近くて、近藤君の前髪が私のおでこにかかる。

これが押し倒すって状況なのかなんなのか、もう頭がついていけない。


その知らない目は誰?

背中に馴染まない手。
好きな人なのに怖い、そう思うことはトンチンカンなのかな。


近藤洋平、十七歳。
主な口癖は『関係ない』で、よく耳にするのは『お前バカだな』『今のギャグ』、

『俺ってばイケメンだから』みたいな、つまんないツッコミや面白くないジョーク。


性格は小学生を模範していて、

悪意のみで冴えない生徒をイジる男子たちに自虐ネタを披露し、

自分の話題に関心をひきつけ、悲しんでいた一人をこっそり助け出す面倒臭いパフォーマンスが趣味な人。


なんだろう、昭和ダサい感じ。クラスの平成男子とは中身が違う。


そんな希少価値のある人に好かれる田上結衣なら、きっと大丈夫だ。

二人の恋愛は、皆に憧れられたり嫉妬されたりで忙しいけど、皆に祝福されるんだ。



「すき」

付き合って九ヶ月の彼氏がクリスマスに酔って好きだと囁くなんて、本当に彼は別人になっている。

そして、まだ正常な私の唇が勝手に動いていた。