星空刺繍


近藤君の個性は、何事にもガチな子が傷つくであろう言動なんだけど、

突き放してくるところが好き。
見下してくるところが好き。
毒づいてくるところが好き。

私は人として、近藤君のそういう性格が大好きなんだ。


「今度は叫ばなかったじゃん、偉い偉い、成長したなお前」

嬉しそうに笑うと、唇の隙間から少年っぽさが似合う八重歯が覗く。


嫌味な発言も、彼氏が彼女をおちょくって楽しんでいるなら、

通常どおり私は幸せになるんだけど、

なんか今日はずっと近藤君のペースで悔しくなった。


いつもなら、『はー? ウザイ失せろ』って文句を言って、わざと怒ってみせて、

『短気だな! ゆとりかよ』って、つっこんでもらえるよう仕向けるのに、

数分前のキスに泥酔してしまった私は、潤んだ瞳で睨むしかできない。


だって、心臓が壊れて上手く頭が働かないんだもん。

いっそ、今日は人魚姫っていうファンタジーな設定にしよう。

本当は緊張で声が出ないだけなんだけど、それはバレたくない。


私は必死なのに、近藤君ばっかり余裕で狡い。

クレームを伝えられない分、精一杯眉と目を近づけて、不満をあらわした。


それが失敗することになるなんて、この時はまだ知らなかった。