手品や魔法、トリックアート、心の中は子供ばりの好リアクションがとれる今、
彼氏越しに見る世界が果物っぽい香水の瓶を通した恋色に染まるのは何故?
空気を労る速度で私の背中に近藤君の両手が回され、
ワンピースのファスナーがゆっくりと、遠慮気味に下がる音を耳にした。
これからのことを思うと、緊張だけで気絶できそうだった。
「かわいい」
囁きよりも雰囲気がある甘い吐息と一緒に呟かれた言葉に、
思春期真っ盛りの十七歳彼氏に慈しまれまくってる乙女開催中の十六歳彼女として、
どう反応したらいいのか分からない。
だって、こんな発言はいつもなら、
『田上さん可愛いよ、ずんぐりむっくり雪だるま並にな?』って、笑いながらけなしてくる癖に、
逆に、『やべぇ、今日お粉叩きすぎておかめブスだな』って、お化粧をイジってくる癖に、
むしろ、『可愛いよとか好きだよってアレな決め台詞をさ、真顔で披露する奴とか絶対正気じゃねぇよな? 語り無理、三流ラブストーリーかよ。
あはは、俺は無理ー。だってシリアス恋愛とか俺キャラじゃないからさ? 純愛関係ない、引くわ。ウケるわ、なぁ?』って、
ロマンチックでドラマチックな恋愛に夢中なクラスメートを全否定してる癖に、
なんでこういう時になって、女子中学生が慕うイケメンを演じる訳?
可愛いなんて、素で褒めないで。
可愛いなんて、本気で愛でないで。
可愛いなんて、私を堪能しないで。
可愛いなんて、恋に満足しないで。
クリスマスモードに場面が転換していく今が、息苦しいのは何故?



