『付き合って九ヶ月も経つのに彼女とはまだキス止まり。』
それって多分、それなりにモテるタイプのクラスの男子じゃ、なかなか居ないと思う。
いつだって私を無視してできたのに、そうしようとしなかった意味くらい分かっていたのに、
まだまだ先でいいとずっと優しさに甘えて、そういう合図は知らないフリをした。
応えたいと思う。
いつかこういう日が訪れると、ずっと意識していたから。
触れるだけのキスは、どうしても七夕にリンクして幸せに胸が苦しくなる。
もしも初恋じゃなかったら、こんなに大事じゃないのかな?
零した息は熱を含む。
この後の展開は、普通どうするんだろう?
皆に詳しく話を聞いとけば良かったって、恥ずかしいからと躊躇せず愛美や里緒菜にもっと相談すれば良かったって、
今更、後悔する。
だからなんだ。
気づいた時にはなぜか二人はベッドの上に居た。
歩いた記憶はないし運ばれた覚えはないしで、もう許容量をオーバーして混乱するしかできない。
電気がまだついているんだって、冷静な自分はちゃっかりチェックしている部分が謎だ。
トナカイの鼻が赤いとか、ジングルベルが鳴るとか、ムードがない童謡もオルゴールバージョンならそれなりに演出できるらしい。
とりあえず、向き合うように座る近藤君のことしか頭の中に居なくなった。
グロスがはみ出た男の子の光る唇は凄くドキドキしたし、
彼氏にそういうキスをされていた自分を思い出し、照れ臭くなる。
「…………。」
さっき居た場所、指輪の箱とピアスの隣に、なぜか私が着ているはずのカーディガンが心細げに落ちていた。



