子供の頃は、ホールケーキはおっきい方が単純に嬉しかった。
六つに切って、私の分、お姉ちゃんの分、お母さんの分、お父さんの分、余った二切れは次の日に朝ごはんの後お姉ちゃんと食べてた。
それが欲張りな楽しみの一つだった。
彼氏と二人なら、両手くらいの小さな丸を囲う方が幸せなんだなって初めて知ったことは秘密。
ここのマンションの近くにある洋菓子屋さんのカタログで数ある中、
いつでも手に入るイチゴのショートケーキを選んだ理由は、
チョコレートクリームだと口の端についたら見苦しいのと、
タルトだと上手に食べれず崩れた土台が不格好なのと、
乙女に苺味のキスが無難だと思ったからだ。
チョコレートにメリークリスマスの文字が書いてあるだけ、サンタクロースが狭そうに乗っかっているだけ、
たったそれだけでも、最高にクリスマスがとっておきになってしまう魔法。
せっかく蝋燭があったのに、近藤君も私も点火を忘れていて、
マッチもライターも着火器もないつめの甘さに爆笑した。
こうやって、なんでもないことを小学生に対抗する勢いでいちいち取り上げ、面白おかしく喋る彼氏だから、
こんなにも彼の彼女でありたいんだと思う。
恋愛がしたいなら相手は誰でもいい。
近藤君となら恋愛がしたい。
この意味は、持ち主の許可なくいつの間にか胸に刻まれていた。



