つまらない会話をしつこく繰り広げてこそ、俺の恋愛は満たされるんだと思う。

つまり、真面目な話とか本音トークとか、シリアスな雰囲気とか真剣モードは、そこにゆるい要素がないならば、

あまりに十代の学生による純愛プロ過ぎて笑ってしまいたくなる人格欠陥少年が、田上さんの彼氏だ。


「、あ! 余熱忘れた!」

「はー? お前最初に言ったじゃんか俺」

「おっちょこちょいアピールなんですー」

「うっわ、可愛い可愛いー田上さん可愛すぎるわ」

「そうなんですー私ってば天然ボケでドジでおとぼけ屋さんでー?」


ジングルベルみたいな軽やかな声とベースみたいな低い声は、きっと上手に重なるはずだ。


「あー、ほんま余熱しやんとか使えねぇ彼女だわ」

ミートローフを落とさないよう慎重に、右足のすねでゆっくり田上さんの膝裏を蹴れば、

セクハラだと大袈裟に叫ぶから、その対人センスが面白い。

この子はハイタッチ系の友達ノリな接触なら、こうして馬鹿笑いする癖に、

一度俺が恋人っぽい感じで手を伸ばしたなら、異常に硬直してしまったから、

付き合って九ヶ月。


実は身体のラインが分かる程に強く抱きしめたり、肌の質感を味わうように密着したりなんかしたことがない。


だから――――