メニューは一ヶ月間二人であれこれ悩んだ結果、
パウンドケーキの型で焼く混ぜるだけで単純作業のミートローフと、冷凍パイシートを被せるだけでお洒落になるオニオンスープ、
トースター任せのヘルシーポテトフライと、カタカナの葉っぱをちぎってサーモンを乗せるだけのサラダ、
市販のクラッカーにチーズやらオリーブやら輸入食材一式をちりばめたオードブルをチョイスした。
赤、黄、緑、まあまあテーブルはクリスマスっぽく飾られると思う。
エプロンをした田上さんの腰回りは細いし可愛いし、玉ねぎを切る手つきの遅さが好ましいしやらしいし、
左に髪をまとめて覗くうなじが白いし綺麗だし、
なんかこう全体的に後ろからギュッと抱きしめたくなる要素がありすぎて困る。
だって、このままキスして、エプロンの紐をほどきながら調理台に寝かせてなだれ込みたくなる。
けど、そんな発想は爽やかさに欠け、非常に不気味なので保護者ウケを気にする高校生的に却下だ。
「これ空気抜いたから。ちょ、田上さんレンジ開けて?」
彼女がときめく自分のツボなら知っている俺は、
わざと上唇を尖らせ八重歯を強調してみせたら案の定、
溺愛中の恋人は首まで真っ赤にして、彼氏の指示に従い扉へ手を伸ばした。
好きとか愛してるとか、絶対ロマンチックに語らない二人なんだけど、
そんなガサツ彼女の癖に、ホッペが心の中をバラしていることを、本人は知らないんだろう。



