ケーブルテレビが時代を感じるクリスマスソングを延々と流している横で、
安っぽいオーナメントで飾り付けされたツリーがチカチカと照らされ、床に絵を作る。
省エネの青色や白色より星屑と同じ黄色のライトの方が、幻想的だし温かみがあるし柔らかいし目に優しいから、
俺は最近のLEDイルミネーション事情があまり好きではないのだが、
そんな話を雅にした覚えはないのに、なぜかツリーは流れ星色に点滅していた。
数時間後、それが田上さんの雪肌の上にいる俺の影を映し出すのかと思えば、
やっぱり期待にニヤけてしょうがなかった。
用意周到、暗闇にしたところで、きっとツリーの電源まで切る余裕は彼氏にないのだし、
緊張と不安でいっぱいいっぱいな彼女は、魂胆に気づくゆとりはない。
「もうお腹空いたー、こっちで作るからお昼あんま食べてないもん、ワイルドに空腹」
変態な妄想を遮断した頃には、シックなワンピース姿の田上さんが居た。
ラインを隠すようにロングカーディガンがラッピングしてしまっている。
とりあえず、男子が食いつくも女子が白い目を向けるやらしい空想は後回しにしよう。
今は精一杯楽しいお料理対決に、俺は燃えることにした。
「ちょ、田上さん小匙貸して」
「はい。レンタル百億万円」
今までの家デートで、二人並んでキッチンに立ったことはあるのに、
どうしてか照れ臭く、彼女のつまらない冗談にアハハと笑って心を正常にさせようと頑張るしかできなかった。



