昨日から一週間、この部屋を借りてくれているそうで、
田上さんの門限九時までに俺が送る時、生ゴミやらまな板やらお皿やら、邪魔になる荷物は一旦放置し、
翌日片付けてくれたら大丈夫だと、雅が言ってくれた。
また、泊まるなら泊まるで、連絡をくれなくても一週間は好きにしてくれて構わないと甘やかしてくれた。
窓辺にツリーが飾られているのは、備品のテレビやオーブンレンジではなく、
きっと親友がサプライズで昨日用意してくれたのだろう。
ここまでよくしてくれる理由は、学生間の友情だからなのか分からない。
なんとなく、本当になんとなくなんだけど、田上さんがここを借りてくれたのは雅だと知った時に、
彼は『ありがとう』と感謝されたいからな気がしなくもない。
お金を払おうとしたら、お姉ちゃんの旦那のサービスなので、元々無料だし要らないと笑い、
『本当に好きな子とクリスマスとか良いね、憧れる。二人みたいなバカップルになりたかったなぁ。お幸せに』と、
引くぐらい胡散臭い台詞を述べられた。
だったらと、姉夫婦に準備した菓子折りさえ、受けとってはくれなかった。
雅は知らないんだ。
自分がどんな目で田上さんを眺めてるかを。
そして、俺を羨ましいと視線を送る一方で、憎悪したような壊れそうな瞳を向けていることを。
まあ、雅は年上の恋人と旅行に行くそうだから、その推理は色んな意味で正解がないんだけど。



