それから予約していた駅前のケーキ屋さんでクリスマスケーキを買う行為も、なんだか王道で照れ臭かった。
乾いた絵の具みたいな表面のポインセチアを紅白交互に並べ、形から入るクリスマスムードはやっぱり日本人らしくて幸せだ。
「いらっしゃいませ」
高校生カップルが来たと、店員さんに自分たちの青春時代を重ねつつ観察される感覚が心地良くて、
付き合っていると実感できるため、なんだか毎日ご機嫌でしかない。
「すいません、予約してる田上です」
両手で丸を作ったぐらいの大きさをしたホールケーキを受け取りに、
田上さんがレジへと小走りをする。
カチューシャをした髪の毛はサラサラと長く、背中で跳ねるから可愛い。
後数時間経てば、おもいっきり撫でられると想像すれば、気が変になりそうだから控えておこう。
控えのシートを渡す時、そう遠くない未来に「予約している近藤です」って聞けたなら最高だなんて、馬鹿げた夢さえ考える今、
これこそがクリスマスバカップルの典型的な例だろう。
垂直を意識し、慎重にケーキ箱を運ぶ彼女と、両手に目一杯の荷物を提げた彼氏は、
十代角度で愛の巣と呼ばれる二十代後半目線で野蛮と嫌悪される目的地へと足を進めた。



