たった二人分なのに両手いっぱい買い物袋をぶら下げて、
ただの道を歩く今、なんでこうも幸せなのだろうか。
歩道橋を上がるなら信号が長かろうが横断歩道を、階段を上るならエスカレーターを、
いつだって後者を選ぶのに、
どうして田上さんと居る時、面倒臭い前者を俺は喜んで選択するのかよく分からないが、
この思考を説明できないことこそ、きっと恋愛の尊さだ。
「重いー、重くて筋肉つきそー」
「はー? 持つもんか、俺のが重いんですからね。甘えんな」
「優しくなーい!」
「それをワガママと言う」
ゆるゆるとしたお喋りに、二人笑える今この時、きっと人生で結構思い出したい青春チックな瞬間だと信じている。
幼さに垂れた目や、左の困り眉が覗くよう計算されたパッツン気味の斜めに分けられた前髪、
雪並に白い肌や、お菓子屋さんの魔法みたいな香水、学年の中でとりわけオシャレで可愛い彼女と、
しっかり地に足つけて、子供に読めない名前をつける世相にぴったりなクラスメートらによる純愛とは違うシビアな目線で恋愛をしていきたい。
そう、わかりやすく言えば、携帯電話に頼らない自分たちでありたい。
「重い重い重いうるさいから俺が持つわ、貸せ」
優しさをハンサムに決められない性格のせいで、ガサツに半笑いで奪ったのは近藤洋平、十七歳で、
「持ってなんか頼んでないし」と、感謝を文句で表すのは田上結衣、十六歳だ。
そう、二人は一番良い時期の恋愛で、
クリスマスツリーが輝き出す頃、二人は一番良い時期に甘い世界へ飛び込むこととなる。



