門が開いたままの車庫、家族分より多い靴が並んだ玄関、賑やかな声が響く廊下、
今日は十二月二十四日、小学生の弟妹が居る家庭はわざとらしいパーティーが似合う。
来客の存在を知った上で、びっくりしたと喜ぶ兄を演じようか。
「ただいまかえり――うわっ、ばあちゃんたち居たの! 間に合って良かったよー!! もちょっと帰らないで?」
チキンの骨、氷が水になったグラス、散らし寿司の残骸、クリームが残ったケーキ皿、干からびたサラダ、
楽しい会は終盤だったらしく、
「お兄ちゃん見て!」
弟がジジババに貰ったプレゼントを自慢してきた。
耳を引っ張りピアスを見せたりポッケに隠した指輪を出したりで、対抗したいがここは笑って誤魔化そう。
お腹いっぱいなんだけど、テーブルの隅に一人分をオシャレカフェのワンプレート夜ごはん風に盛り付けられていたのを発見したなら、
腹ペコですとばかりに食いつこうか。
けれど、
「じゃあそろそろ。」
せっかく兄が帰宅したにも関わらず、入れ違うように席を立つ老人二人は相変わらずだ。
キラキラ光る星空の下、
ジジババが自宅へ帰ってくのを皆で見送った。
「クリスマスおめでとー」
よく分からない別れの挨拶をする弟を、ホワイトデーに追い出す作戦を今日から念入りに立てようと、
全然ロマンチックじゃない夜に誓ってみた。
〓星空刺繍
〓おしまい