星空刺繍


パーティーの定義が謎だけど、一応二人なりのクリスマスパーティーをすることにしていたから、

まず駅の近くにあるスーパーへ行った。


店内のディスプレイが毎年使いまわしで埃が見えると、従業員の頑張り具合が微笑ましいし、

お菓子入りのブーツがデッドスペースを埋め尽くす勢いで並べられると、一つくらいと衝動買いをしたくなるし、


便乗値上げされたスナック菓子や炭酸飲料水などがエンドに積まれると、高いといいつつ気になるし、

パプリカやブロッコリー、ミニトマトでクリスマスカラーの食材をカゴに入れる主婦がいると、幸せでくすぐったくなる。



「あれだな、オードブル買った方が安くつくのかなー? でもお惣菜今日異様に高くね?」

相変わらず、お互いが数時間後の出来事を意識して妙な距離感があったのだが、

まあまあ料理好きな趣味のせいか、少し調子を取り戻し、

まるで新婚さんのようにキャベツとレタスを間違えるネタでさえ楽しくて、

ショボイと有名な寂れたお店で一時間近くも商品を品定めするのがベタで面白かった。


「冷凍んミックスベジタブル? あれあんま好きくない、あれ甘過ぎるくない?」

「分かる、ミックスベジタブル乱用されたら食欲無くす謎の心理」

どうでもいい会話のやりとりに、俺は俺たちだけの付き合っている意味を知る。


好きな人に話しかけて、好きな人が笑ってくれる。
それは、好きな人の笑い顔が見たいから、好きな人に話しかけるという非常に傲慢な恋心の象徴だ。


いつかの未来、オママゴトじゃなくて当たり前に過ごせたらなと願いたくなるオメデタいのは俺だ。