学生が主役のラブストーリーはとことん都合が良すぎるんだけど、
やっぱりベタなハッピーエンドが支持されがちだろう?
親は子を理解しすぎでも、友達は悟りを開きすぎでも、恋人は世界が狭すぎでも、
本人は過去を抱えすぎでも、そんな詰め込んだ設定こそが活かされるんだ。
「とりあえず走らせてください」
田上さんを振り切った俺はタクシーに乗り込むやいなや、
古臭いキザな言い回しで逃走をはかる。
バックミラーごしに乗客を見た運転手さんはメーターに手を伸ばす。
高校生のお付き合いは二人の性格がアレな方が、
親が応援してくれたり、友達がトラブルを解決してくれたり、
恋人が優しく包んでくれたり、本人がレンアイ命だったり、
総括的に、ヒーローであろうとヒロインであろうと周りを巻き込み純愛劇場を繰り広げるらしい。
――――そう、エキストラのタクシー運転手さんが、実は陰のキーパーソンだったり?
「たのしかったよ今日?! 指輪うれしかったよ凄い! 私クリスマスうれしかったよ! ありが〜っおやすみ!」
彼女の叫びを聞き入れようと窓を全開にする粋な働きは、サンタクロースだろうと勘弁だ。
バカでっかい声は耳の奥で反響し、幸せだと暴れやがるのに、
田上さんときたら犯人バレバレなピンポンダッシュを決めた小学生ばりに猛スピードで逃走していきやがった。



