クリスマスイヴにへました割には、心いっぱい清々しいのは何故?
「てか近藤くん、やっぱし払うし半分ぐらいは私に払わせて。たまにはあれじゃん、優しい結衣ちゃんに甘えなさいって。あはは」
ああ、しつこく改札外までストーカーしやがるこの女をどうにかして頂きたい。
『こっちの指、予約しとくから。』
確かに俺はスイート呪文を唱えたはずだった。
つまり、田上さんは純愛に感動した拍子に腰を抜かし、六分程度化石になって二人の未来を信じる短歌を詠む予定だったんだ。
それがどうして思い通りに事が運ばない?
いや、そうだ、個人的な夢を叶える魔法は私怨に値し、無垢な子供や純心な少年少女には効かないというではないか。
「来るなしつけぇ空気読め! ごちゃごちゃ煩せぇ少しは黙れ! じゃあな美少女!おやすみ太るなよ!!」
小学生みたいな捨て台詞が可愛らしい。
なんか分かった気がした。
『オレだけを見ろよ』って必要とされたいから合コンに行くと宣言したり、
『お前しかいないんだ』ってすがられたいから浮気をしたと事後報告したり、
そんな感じの女子力高い連中を今までは否定してたけど、
普通な女子高生の乙女心を分かってあげても良いような気がした。
「待ってよ!」
だって、好きな子に追いかけてもらえるのってくすぐったい。
『待ってよ』
その一言を聞きたいがために、アホな国の王子様は走り出す。



