女の子の白い肌を汚す鬱血した赤い色は、男の子の束縛と執着の分かりやすい再現方法だ。
眠る前にまず今日一日の淡いエピソードを思い出し、次に付き合い始めたここ9ヶ月頃の出来事を辿り、
更には片思い中の一喜一憂な記憶を振り返り、
最後に山瀬とか小崎とか女友達、雅とか大塚とか男友達、
奥サマとか先生とかクラスメート、母親とか姉とか家族、
近所の住民とか町の店員、彼氏の知人とか中学時代の登場人物、
合間合間に俺、近藤洋平を散らつかせ、
総合的に甘くにやけて薬指へキスを重ね、
高校生活を脳裏に焼き付けてくれたなら、
今の二人の恋愛が、きっと将来忘れたくない一瞬となるんじゃないかな。
独り言をきわめた俺は、何度めか不明だが別れの言葉を送る。
「じゃあタクシーで帰るから。おやすみさらば達者でな!」
手を振れば、好きな子をかすめ、指輪が揺らぐ。
この場合、後ろを向くのか明日に向かうのか微妙ではあるが、
とりあえず引き際良くロータリーへと足を進めた。
一年中太陽に酷使されたせいで疲れたベンチ、手入れが行き届かないのか細すぎる植木、
放置札が巻き付けられたチャリの行方が気になる自転車置き場、分別されているようで適当なゴミ箱、
目指すは割安タクシーだ。



