生チョコの石畳みたいな地面に転がるのは、
ヒットの秘訣がイマイチ掴めない黄色い鳥のキャラクターが目立つ丸っこい防犯ブザーだ。
そういえば去年の今頃、俺の彼女になる予定の人が、廊下でダイナミックに通学鞄の中身をぶちまけていたことを、
足元を見た俺は不意に思い出してしまっていた。
『モテるのに彼氏作らないE組の一番可愛い子』
『付き合うには敷居が高い可愛さレベルの普通科女子』
『イッチーと並んで許せる可愛さの一年ん女』
入学して間もなく定着したそんな感じの皆の意見を十五歳の俺は張り切ってまとめ、
とあるキャッチコピーを完成させていた。
『可愛いのに中学からずっと彼氏が居ない隣のクラスの白い女子』
それは余所行きのオシャレ、
『一回だけでもしてみたい可愛い子』、これは同級生に合わせた言い種、
『ただ眺めてるだけでなんかこっちが嬉しくなる可愛い子』こそが本心で、
慎重に振り返っても、あの頃はミーハーだっただけだ。
カワイイを代表して指を差されるおっとり印象の田上さんは身内で人気が高く、
『あんな可愛い子が彼氏にしたがるのはどんな奴だ?』とか、
『あんな可愛い子を落とせる男なんてイッチー以外で誰だよ?』とかって、
学年が揃う集会ん時や他クラスと合同の体育ん時とか、
野郎が固まって討論するには結構場が盛り上がるテーマだったんだ。
そして、



