どこからか吹く風に髪をなびかせるイケメンを目指したら成立するのに、
どうして非常訓練の際にふざける小学生をコピーしてしまうのか自分でも謎だ。
こんなんだからチャンスを見殺し、今日もできなかったんだ。
悔しいが、原因はいつだって俺自身らしい。
けれども、二人が現役学生だっていう設定は不変なので、
どうやってもゆとりパワーが発動し、愛情は伝わるらしく、
そう、彼女は帰宅困難な彼氏の心配をしているようだった。
「え、てか待ってよ。冗談ナシでどーすんの電車」
掴んでいる手を左右に振って抗議される。
確かに田上さんの見解には納得で、
田舎な隣市まで寒空の下、どう時間を潰すのかって話だ。
この辺りで知り合いが居ると言っても、高校から随分と距離があるため数少なく、
その内、一番図々しく乗り込める雅の家に行くにしろかなり遠くて交通手段がない。
後先考えてなかったんだ。
衝動だったんだから仕方ないだろう?
男子ってそういうもんだ。
どう転ぼうが今日はクリスマスイヴ、神様だって応援してくれるはずだ。
開き直るのも粋だと盲信しようか。
無言の俺が揺すられる手に強く力を込めてみたら、田上さんのスッピンを装ったまつ毛が羽ばたいた。
「俺、どうしたらいい?」
モテ子に学ぼう。
『雨に濡れたままだと風邪引くよ』でホテル直行、『終電ないの』でお泊り成功、
『この後どこ行く?』で朝帰り決行、
そんな流れ、学校でデザイン専攻中の生徒は恋愛ステージをも創りたがる。



