『俺、不器用なんだ』
この決め台詞は、女子高生ぐらいまでならなんとか支持されるだろうけど、
大人たちには『純ぶって女ウケを狙う計算男の癖に』って見做されるオチだし、
『不器用とかただの逃げじゃん、成長しようよ』って毒を吐きたがる彼女を持つ俺的に得はしないしで、
可能な限り不器用男子の仲間入りを遠慮したいものだ。
よって、今宵の恋愛下手の言い訳は、
『アタシのカレシってばがっつきたいのにお前を大事にしたいって我慢してくれて。
アタシ愛されてるよね、素敵な人に出会えて嬉しいの』的な、
女子力末期コメントを狙いたいがための単なる点数稼ぎだとしよう。
ありのままでぶつからず、本音を晒さない俺にあえて惚れる田上さんってやっぱり周りの女友達と比べて変わってる。
たとえば、
小松菜の軸を落とした時、それを緑の薔薇に見立てて摘んでみせ、
『ブローチ!』って胸に飾る真似をしたり、
飛行機雲を発見した時、それを『茹でたハモだ!』って指差したり、
そんな発想力があれば、
近藤洋平っていうつまらない人間は、
多分、田上さんの中で凄く特別な登場人物として活動しているはずなんだ。
つまり、彼女が書く物語の彼氏は毎日が恵まれまくって幸せなんだろう。
そして、こんな妄想を始める俺は、当然恵まれまくって幸せで今に至る。



