「……――え、! なん、で、降りたの」
繋がれた手を解く訳でもなく、田上さんはキョトンと問う。
そうやって子供を真似、なんでも素直に疑問をぶつけるのはシャープじゃない。
それは矛盾だらけな映画の展開でさえ、
最終的には『伝説によると』とか『実は夢でした』とか、『魔法によって』とか『皆様に委ねます』で、
なんとか補えるマジックに科学的根拠を求める神経にそっくりだ。
そんなムードのかけらもない状況なのに、
運動会でフォークダンスをする距離感で向き合い、見つめ合うと、
胸の真ん中ら辺が愉しそうにときめくのは何故?
「……。はてな。」
でも駄目で、盛大なラブラブリアルピュア恋愛台本に乗っかれない性格が影響し、
少々ぶりっ子気味に俺が不思議ちゃんっぽく首を傾げてあげたのに、
「え、近藤くんアホ? 自分次とか最終のしかないじゃん、二時間以上先じゃんか」と、
笑い所に欠ける冷静なツッコミを入れてきやがった。
おかしい、なんで『門限ギリギリまで君の傍に居られるネ』とお菓子乙女的に喜ばないんだろう。
やっぱり変な女だ。
厄介なことにクラスメートを落とすマニュアルが通用しない非ロマンチストが田上結衣のようだ。
彼氏に感動するより彼氏に困惑しやがった仕返しで、
「うんアホなんだよお前が惚れてる洋平くんアホだし。今更気づいた訳」と、
つまらない言葉を組み立てる俺は我ながら幼い。
もしかして、近藤洋平は不器用なタイプなのか?
仮にも俺がその『不器用な男子』に当て嵌まるのだとしたら――?



