星空刺繍


『A組の何々チャンがブログで写メってたブーツめっちゃ可愛くない? 見た?』

『親が最近ヒス入って〜、子供は耐えるしかなくない?』

『彼女が浮気したってキレてくるんだけどあれ浮気に入らんくね?』


つまらないとか痛いとかくだらないとか、

実際に程度の低い学生らしい日常会話をマイナスに思うのが大人の証拠なんかじゃなくって、

それって物事をプラスに感じられない自分の心の貧しさなだけで、すなわち短所だ。


よって、電車内で俺たちが繰り広げるお喋りに舌打ちするのは間違いだと言っても嘘にはならない。


「てか田上さんサンタクロース何歳まで信じてた? 俺とか四歳」

「四歳?! 早くない!? 夢がないよ。えーとー……結衣はー、小六、だった。かなぁー?」

「あー、やっぱり。十二歳まで信じるとかお前純粋だったんだな? 可愛いな」

「えー? 普通にサンタさん居るって思ってただけで純粋とかそんなことないよ〜? ――…………、……。

――――……え、待って、いつまで続けたらいいのこの面白みに欠ける会話のやりとりを!

女子力高すぎ、高校デビューの勘違いカップル的な」

「あはは分かる、まったく興味がわかないトーク術、ウケる、田上さん痛い女の切り返し真似るセンスあるわ、ふ、」


――俺たちの場合、つまんないふっかけで盛り上がれたら、正真正銘の愛なんだ。