星空刺繍




八時半、若者に惜しまれつつツリーはさよならをした。


来月になると、次は門松やお飾りなどが大々的にプッシュされ、

再来月になるとハートの風船や胸きゅんキャッチコピーのポスターが推される訳で、

行事の場所取り合戦も大変だ。


世間一般、入学式やらホワイトデー、母の日やら節分、お月見やら雛祭り、

忙しく街中を彩るイベントで、皆に一番投資されているのは何なんだろう?


俺は結婚記念日を毎年最大に祝いたいけど、多分田上さんは旦那の誕生日を秘かに重要視するんだろう。



折り紙だとレアな金銀に似た色が、一生懸命夢を放っている。

流れ星は滅多に見れないが、自分が高速で動けばもしかすると目撃できるのかもしれない。


例えば、電車の窓の奥を魔法にかかって睨んで見たら、チェーン店の電飾さえ願い星と等しいはずだ。

車両同士がすれ違う瞬間の喧しい爆音だって、呪文を唱えてみれば初恋メロディーと近しいはずだ。


平日休みで土日勤務の仕事帰りらしいローヒール靴のお姉さん、

こんな日なのに買ったばかりの雑誌を広げモデル討論を繰り広げる二十歳前後の男グループ、

眠たそうな子供とおっきな紙袋を抱えた父親、

はじまった思春期に色恋より友情だと主張してごまかすクラスの仲良し男女の中学生軍団、


電車の中に居る人の数だけあるお付き合いのルール、

カッコイイ男の子と可愛い女の子場合は?