「へ! バレた? 市井の彼女って絶対幸せだーよね」と、田上さんが女子中学生らしく言えば、
「うーわ、傷つくし」と、俺は男子中学生らしく答え、
「あはは、ナイーブアピですね」と、美少女が厭味ったらしく笑えば、
「言葉は重いんだよッ?!、だろ、はは」と、美少年はノリよくツッコミを入れ、
「も、ウケんだけど。この流れ何、中間終わったファミレスー?!」と、お姫様が王子様へと満足そうにほくそ笑んで完璧なんだ。
キスより触れ合いより語らいより甘いのは、
田上さんの瞳の奥で自分が贈った恋する結納が返ってきた時だ。
四秒以上も目と目が合うことって、凄く珍しい。
お互いが見つめ合わなきゃ成立しない今、
こうして確かに目の前に居る子と、小さなことに目を瞑り心の中ではぐれたくない。
大人になる前、約束なしで教室で見つけられる現在、
仕事ではありえないが授業をサボったり、家事に追われることない暇な放課後にフラフラしたり、
勉強だけを物差しにしたり、なんとなく友達になっていつの間にか欠かせない人物になってたり、
それってせいぜい十代までで、
『あの時もっとああしとけばよかった』の後悔や、『あの時はよかった』の懐古、
たらればを裏切る俺の日常が未来で特別になる学生の時に出会えた事実は、
決して無駄にならない。
この恋愛はまだ成長過程の二人だからこそ、今の記憶が価値観の基準になり、つまり自分の土台になる。
ほら、どうでもいいことを騒ぎ立てて幸せを決めるのは、ナルシストの得意技だ。



