俺のお姫様はクラスの可愛らしい女子みたく純愛ガールじゃなくて、著しく性格が歪んでるせいで、
王子様の嫉妬を愛に置き換え、束縛執着を嬉しがってはくれないんだ。
そう、誰かと居るのに彼女とメールをしたり、誰かと遊ぶ予定だったのにドタキャンし彼女のトラブルにかけつけたり、
そんな臨機応変可能な限り恋人優先であるより、
付き合ってるからこそ、後回しだろうとも相手が許してくれるはずだと信頼しあってる関係を、
田上さんは彼氏と築きたがってるようだ。
すなわち、いつだって俺の決断を操るのは女神様次第って訳で、
「そうそう、俺と雅は学校イチの大親友でマジ最強のツレで一生の友情で揺るぎない絆だからなー? あんな奴二度と出会えない、女には分からねぇんだ」と、
尽くし気質の彼氏はイケメンな笑顔を貼付け、
リクエストに応えて『不良だけど不器用なだけ、アタシの前では子供なんだよ』の中学生あたりが焦がれる法則にありがちな発言をし、
幼稚なヤキモチの隠蔽作業に専念する。
目に見えない風を透明だと思い込むのは間違いで、風には季節の彩りが混じってると気づけた時、
それは老いた証拠なのかもしれない。
星色をした視界は恋に染まった肌を生温く包み、毛先を揺らして去っていく。
普通のカップルが地面にくっついた靴を動かすのは、きっとキスをするために少年が近づき、
受け入れるために少女が軽く両踵を持ち上げる、そんな甘さがきっかけなんだろう。
今日はクリスマスイヴ、最高にロマンチックな一夜となる夢のイベントだ。



