とりあえずプリクラを眺めながら彼女を隣に飾り、たらたら駅周辺を歩く今、

日本人のハートは平和なんだと改めて感じる。


服屋さんは非日常的なデザイン性に富んだクリスマスパーティー用ドレスを着こなすマネキンを並べ、

雑貨屋さんはクローゼットで十一ヶ月封印されることとなるクリスマスグッツを店頭に展開し、

食べ物屋さんはそれっぽい響きのクリスマスメニューを黒板に飾り、

本屋さんはサンタ帽子を被った店員さんがクリスマスにオススメな雑誌を積み、

どこに行ったって童謡・邦楽・洋楽、クリスマスソングを耳にして、

トナカイやツリー、ベルやジンジャークッキーの出没率が高い街中を歩く人々の八割がクリスマスデート用の衣装を身に纏い、

今日というクリスマスな一日に、皆が青春を重ねているなんて、

本当に素晴らしい一体感だと思わずにはいられない。


クリスマスイヴ。
十二月は一年で一番『クリスマスなんだから』の決めゼリフを乱用して、

物事を押し進める時期だと勝手に推理した。


そう、クリスマスなんだからまだキス止まりの田上さんと俺でも、

初めての甘い一夜を過ごしたい。

そんな願望に引く連中はオシャレではなく、微笑ましい男子高生のポップな夢を温かい目で包むのが大人ってやつだ。


このように、常識ではとか普通はとか、大人ならとか空気を読むとか、相手の人格を問う尤もらしい呪文を唱えれば、

俺たち学生は自分が一番正しい意見を手に入れることが可能だ。


つまり、付き合って九ヶ月。
田上さんに純愛の魔法をかけてしまえば、皆みたいにするのは当然の結果だ。