星空刺繍


右は一歩、左で二歩、初恋ビューティーへのカウントダウンが始まっていたなんて、

この時の俺はまだ自分の方が恋愛経験があると気を抜いていたため、予想しやしなかった。


唇から零れる白い息に儚さを連想させるのはナンセンス、

ドライアイスに水をぶっかけて盛り上がった小学生の悪戯に似せて、

「今日から年末お正月で私プラス2キロ余裕。てかだって聞いて、ちょ、聞いてよ。」と、

中身より雰囲気重視の高校生口調の田上さんが笑った。


俺の恋人は可愛すぎてヤバイ。
笑顔一つに、冬の放課後友達とコンビニのソフトクリームを買い食いすると等しい価値がある。


この子に出会ったせいで、元カノの記憶や記録や習慣が都合良く脳みそや心や意識から抜け落ちるのは何故?

田上さんは狡い、勝手に俺の人生に割り込んで過去をスルーして未来に居座るなんて姑息だ。


虹色の幸せを浴びる彼氏はあまりに完璧な恋愛シナリオすぎて、

毎日が絶好調すぎて、世間らの嫉妬で殺されそうだ。


右足が三歩目、おろしたて決め決めブーツが石畳生チョコの上に落ち着けば、

そろそろ魔法の合言葉が解き放たれる時期らしい。


付き合って九ヶ月のクリスマスイヴはまだ後三時間はある、諦めたら負けだ。