やっとこの日が来た。
ずっと待っていた大切な時間がやっと訪れる。
でも、お行儀悪く本能に従いガツガツして、引かれたり身体目当てだと幻滅されたりしたくはないから、
盛りませんよ的な雰囲気を出すよう演じているのはアホな俺だ。
甘い夢を考えると、妄想だけで鼻血を垂らす恐れがあるため、
今はあまり夜めいた類いを考えないようにしよう。
いつもは落書きネタに困らないようデートの最後にプリクラを撮るけど、
今日は最初に撮影を済ませて、その違いに勝手に緊張してしまう。
ただ、変なポエム風スタンプやイニシャルに頼るのはダサいと思う二人は、今までのデートの流れでペンのみでセンスよく画面を飾った。
いつものように俺がお喋りをしつつ、田上さんは横を歩くんだけど、
多分、彼女は一人で変に意識しちゃってて、
「俺ってばイケメンだからバイト代またアップしたんだよー」と、
せっかくボケてツッコミ待ちをしてるのに、
「うん!」と、つまらない返事をしてくる。
普通なら『あんたの顔は胡散臭いハンサム崩れじゃん』と、
ゆるいトークを展開させる癖に、
クリスマスの彼女は、俺が苦手な大変女の子らしいタイプに変わってしまっていた。
しかし、どういう恋愛の仕組みか、ぶりっ子も乙女もお嬢様も、
田上さんなら特別に許せる――むしろ大歓迎になる。
その理由は、俺に恋をした結果の変幻だからアリなだけで、他の女ならウザイことこの上ないだけなんだけど。