ソラシドレミファソ。
魔法の杖から駆け出す煌めきが似合うシャッター音が、人気の少ない駅前に響くと、
石にする呪いがかかったらしく、田上さんの動きが止まった。
「はいツーショット」
そう、手を伸ばしていたお陰で親指に力をこめると、
澄ました笑顔の彼氏とジャンプを頑張る彼女のカップル写真が見事に撮れちゃったんだ。
「え?! 何また撮った?」
「うん!」
「ウンじゃないよ、キモいよ消してってば」
恋人で遊ぶのは、弟をからかうのと同レベルで面白い。
今、この子に感情を植え付けているのは俺なんだと、
自分の存在意義を見出だしている心の闇の仕組みはあまりにイケメンすぎるため速やかにスルーして、
シリアスよりかここは乱雑に、単純にリアクションが可笑しい。
口を般若風に歪めて眉毛を落書き犬的に吊り上げ、十六歳の少女は十七歳の少年を愛しいが故に睨みつける。
ああ、もう脳内決定ボタンは脳裏保存を決めた。
「これ転送してやるよ」
「はー? いらないよ、てか今のじゃなくて単品の奴消してってば、私だけ写った写メ消しなってば」
痴話喧嘩じゃなくて、子供のケンカを繰り広げる癖に、
二人の薬指には高校生活を彩るワッカが光るから粋な絵になる。
背中に数秒、ほんの数秒だけ好きな子に触れたまだ若い手で、
俺はこの先何を掴みとるつもりなんだろうか。



