誰かと生きていく中で一番よく使うのは親指でなく、唇にしたい。
ケータイなんかあくまでモノなのに、写メを消せと喚く田上さんを俺は煩いと思いつつ、
クリスマスツリーのお星様みたく携帯電話を掴んだ右手を上げ、
奪おうと必死で跳ねる彼女を彼氏が嘲笑ってみる。
するとどうだろう。
風船ガムを落とした効果音をヒールが奏で、水飴を伸ばした線を髪が描き、
かき氷を染める赤をホッペが飾り、可愛い女の子が生まれてしまった。
「もー、削除してよー!」
「いやいや、記念撮影」
「ムカつく、それあれだよ、全然存在空気の癖に無断でブログに同窓会の集合写真載せるタイプのさ、友達多いアピール必死なイタイ奴と同レベルだから!」
小学生でありがちな好きな男子にツンツンする女子口調をコピーして、
わざとらしくつっかかってくる田上さんが笑えるから、
「はー? 俺ブログしやんし。リアルな男子高生違うからブログで想いを綴るかよ」と、
俺は俺で中学生にありがちな好きな女子には素っ気ない男子の抑揚をパクってみると、
二人にしか分からない爆笑が起こる謎。
馬鹿なせいか、こんな感じの毎日が嬉しいんだ。
あえて純愛ムードをぶっ壊すガラクタな空気が愛おしいし、
この波長を卒業しても忘れたくない。
そして、矛盾してるけれど、初めて二人が抱き合って気持ちの質が高まったとしても、
『バカ』『欝陶しい』『引くし』が褒め言葉のぐだぐだデートを変えたくはない。
ずっとずっと、ずっと。
俺はブスだと田上さんの頭を叩いてあげるから、田上さんはキショイと俺の膝裏を蹴ってほしい。



