星空刺繍


メルヘン花びらが妖精を迎え入れるように、田上さんの唇がふにゃりと開く。

髪の毛が揺らぐその瞬間、俺は現代人第二の心臓と化した携帯電話のシャッターボタンを押した。


メールや登録、通販や削除、コミュニケーションまるまる平成で一番決定力を持つエンターキーにすべてを委ねたくはない。

圏外に困ることなく、誰かと心の波長を合わせられる自分でありたい。


不意打ちの公開盗撮に、田上さんは「著作権ー!」と、肖像権を間違えたツッコミを入れてくる。


アホだから知らないんだ。

一人ツリーを眺めてた時の幻想的で綺麗な人から、彼氏に反応するやいなや子供っぽい表情に変化した思い出を、

現役女子高生ばりに四連写の写メで保存した彼氏の情緒を。


消せと抗議をしたいがためにこちらへ駆け寄ってくれたお陰で、

可愛い彼女とようやく隣同士になった。


キラキラと輝くこの空間は、オシャレに言うならビジューで少し前の流行りで言うならスワロフスキー、

ネタで言うなら変身ロッドで古風に言うならステンドグラスだ。

誰と見るか、どんな気持ちか、その都度煌めきは姿を変えるから恋愛って素晴らしい。



田上さんは知らないんだ。

俺にとってルミナリエに比べたらショボイこの駅前即席イルミネーションが、世界最大の出来栄えだということを。