そう、似合わない。
近藤君が大人っぽく愛を囁くとか、優しく触れてくるとか、
全然麗らかな夜は想像つかない。
クリスマスだからって、ああいうことになるからって、なんか恋人っぽく甘く接してくるとかありえない。
だってファーストキスの時は、
『織り姫さま、お願いします。七夕に彼女とキスできますように』って、
テンション間違えた小学生のやまびこみたく、天の川に向かっていきなり叫んで、
私がエッて固まった瞬間にチュッて、いきなりだった。
ムード作りもなく、あっという間だった。
唇に何か触れたと気づいた時には、
『すげぇよ、短冊に願い書いてないのに叶ったんですけど』って、
笑っている好きな人が隣に居た。
余韻もない一秒に満たないキスなのに、
余裕で真っ赤になる私の幼い反応に、近藤君てば喜んでた。
二人で手を繋ぎ歩いた帰り道に眺めた星合いの夜を、
多分ずっと結構ちょっと長い間ぼちぼち仮に人生で僅かに一生そこそこ絶対まあまあ恐らく必ず忘れない。
だって、もう近藤君は田上結衣という人を変えてしまっている。
十六歳、十七歳、近藤君は私が青春時代を手繰る時に浮かんでほしい人で、
小学校や中学校を思い出す時に、絡めて反芻したくなる人で、
二十歳、三十歳、未来を浮かべる時に、当たり前に必要な人で、
そんな人に出会えた自分が嬉しい。
今日はクリスマスイヴ、どんな風に私の日常を彼氏は着せ替えてくれるんだろう。
考えたら恥ずかしさで死にたくなるから、死なないように、太陽の下、
彼氏が来るまで、コードだらけなイルミネーションの仮の姿を眺めることにした。