『クリスマスなんだから』と尤もらしい理由を免罪符に、
せかせかやろうとした奴みたいで、なんだか格好悪いなと自身に呆れた。
先を急ぐせいで彼女に精神面で無理をさせ、
揚げ句泣かせてしまう彼氏なんて最強に滑稽で哀れで未熟だ。
そんな高校二年生のクリスマスイブは情けないし赤っ恥だし最悪な記憶となるのに、
俺にはそのダサさが愛おしくてたまらない。
だって、格好悪くあれるって素晴らしいと思わないか?
ヘルメットを被らずバイクを乗りこなす小意気な中学生より、
傘をささずに雨に打たれながら自転車に跨がる健康的な男子大学生を応援したいし、
縮毛矯正でサラサラヘアを手に入れた洗練女子より、
頑張って寝癖を直すもののまとまらない髪で登校しちゃうキャラクターが合う芋娘さんに好感が持てる。
ランドセルは男の子なら黒を、女の子なら赤を背負いたがる小学生に育てたいし、
子供の前では携帯電話の使用を控える意識が働く親を手本にしたいと計画中だ。
そういう感覚の自分でありたいし、そういう価値観の恋人で居てほしいし、
また、二人だけの世界で生きる意気込みはないため、友達にも望む訳で、
排除はよくないが、交遊関係もそういう感性で築き上げたい。
つまり、まだ抵抗が拭えない田上さんに純愛を謡い話術で誘導し優しく手を出す男より、
土壇場で怯み平謝りする坊やの方が馬鹿馬鹿しくて愛着がわかないか?
持論だけどマヌケを徹底すれば、一周して国民的婿候補に化けるはずだ。