足元で不規則に浮かぶ影絵が綺麗なことを、輝くツリーを夢中で見上げる女の子はきっと知らないんだ。
恋人が描かれる一瞬一瞬を名画だと感じる発想が、恋愛中心な学生特有の青春らしさだと笑える。
街中なのにイヴは意外と人通りが少なく、ファミリーは皆無、通過するビジネス単身が僅か、
イルミネーションを楽しむカップルは数組で、各々が自分たちの世界へ浸る。
皆が出歩かない理由は、あたたかい部屋の中で家族なり友達なりパートナーなり、大切な人と特別に過ごしているせいだろう。
十七歳のクリスマスロマンス素敵プランだと、
今頃、彼氏は自分が剥いだ彼女の服を着せてやり、自分が乱した髪を丁寧に梳いてやり、
忘れ物はないか確認しているはずだった。
それがなぜどうして?
時刻は八時過ぎ、あれからキスさえせずに手さえ繋がず、
田上さんと二人、クリエイティブな大人が意見を出し合い作り上げた電飾の集合を有り難がっている。
しかも、予算や規模、電力や流行り、あれこれ会議を重ねた結果が、
一般市民のクリスマスに一役買っているんだなぁと、
お昼休憩は時事ネタに熱心なサラリーマンばりに堅いことを一人ライトに考えている始末だ。
そう、ベッドに密室、クリスマスに指輪、万全な環境で、
イケメン洋平君ときたら、好きな子をドラマチックに愛情深く抱けやしなかった。
しかも、紳士を演じて我慢はしているが男子高生の欲求は基準値を満たしているというのに、
なんか謎なプライドが働き、女子中生が焦がれるオレ様への変身は不可能だった。
その上――