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イルミネーションはいくら青色が経済的だろうと、絶対に金色がいい。

柔らかな月明かりと同じ光たちは、心の中を情緒豊かな童心に変える魔法をかける故だ。


目に優しいし風景と馴染むし、どこかほっとする色は空気中の水分に溶け込みエアーブラシをかけたみたくぼやけるから美しいんだ。


それは金色。青色では表現できない。
あくまで個人的見解なのだけれど。


遠くでクラクションがのんびりと伸びるのが年末っぽくていい。

寒さに手をポッケへ隠し、恋人を隣に飾るのが冬休みっぽくていい。

駅前広場に並ぶ毎年姿をアレンジする巨大なツリーや曜日で仕掛けが変わるトンネル花道が、クリスマスっぽくていい。


十一月二十四日の点灯式に参加したし、ここは普段デートの帰り道だし、

この一ヶ月、無意識に二人で眺めた光景なのに、

田上さんときたら見飽きないらしく、

馬鹿みたいにゆっくりゆっくり勿体振って優柔不断な奴みたいに歩むんだ。


その瞳は俺に注目するカケラもなく、

ただただ大人気テーマパークのパレードに恍惚とする乙女そのものだった。


つまり、最高に今の表情は夢見がちでふわりと可愛い。

少しゆるんだホッペやだらしなく半開きになった唇、

瞬きを忘れ動きがない長いまつ毛や照らされる髪の毛、

俺の彼女は学校で男子に支持される色白華奢な胸元ぺたんこ愛され美少女だ。


そう、皆は知らなくて、彼氏だけが知ってる。

田上さんはどうやったら異性にモテるか、どうしたら同性に慕われるか辺りの計算が非常に得意な女子高生だという情報を。


なあ、一人しか田上さんの記憶の底に入っていない事実を前に、俺は恵まれてるだろう?

贅沢に慣れたら恋愛が朽ち果ててしまう説は述べない方が粋だ。