「イケメン男子?、男前高校生みたいにさー、指輪ん文字にさ、ドラマチックなメッセージ性なんか演出できないって俺は。
自分から教えない方が世の中女子がときめくんでしょうが俺には無理だ」
隣に馴染む人は相手が望む台詞を忠実にくれる。
字面は全く甘くないのに、酷く甘いのは、
身内にしか共感できやしないんだ。
駄菓子屋の帰り道、五円玉の穴から太陽を眺めて幸せがる要領で、
指輪の隙間から私を覗き込んでくる近藤君が可愛い。
たかが目が合うけで来年も幸せな一年になると予感するオメデタさなら、
私は誰にも負けない。
「なあ、田上さん、ふ、お察しの通りカッコつけた部分は全部恩着せがましく主張すんのが俺んスタイルな訳よ。
縁の下の力持ちとか無理。必ず評価されたくね? あはは」
肩を揺らして身体いっぱいで笑う癖が好き。
自然現象か、笑顔は伝染し、私も意識なく唇を持ち上げてしまう。
彼氏の一方的なお喋りに一応相槌を打ってはいた。無言だけど、しっかり頷いて次の音を待ってはいた。
ねえ、二人呼吸が重なっている証拠に、
私は指輪の内側に刻まれた言葉について何も言ってないのに、
「はい、そう。うん正解」なんて、
ちゃっかり聞きとれてる能力が最高。
もう狡い。
彼女がホッペを染めるだけで気持ちを悟れるらしく、
彼氏は照れ臭そうにはにかんで、
小さなワッカへ身勝手に結婚式のおまじないをかけた。



